夏なので蝉がわんわんと五月蠅い
夏なので既視がゆんゆんとしつこい
何もかもが白っぽく ぼやけて見える
正しい夏の正午
足元にべったりと貼りついた影だけを踏んで歩く
したたる汗の中に漏れ出す思考は
刹那的な幻聴になって揮発していく
そうやっていつか訪れる夕立
鉛色の礫を吐き棄てながら
光溢れるはずの晩夏をせせら笑う
感情的な報せ
世界が変質する合図
揮発していった思考が
激しい雨音の向こうから私に呼び掛ける
ほんとうはここにはなにもないの。
身を隠せる影も 呼吸するための言い訳も
「ただ無情に続いてゆくだけの生」
あっという間に晴れ上がる空
黒光りするアスファルトの上を這う
尚 黒い 影