明け方に虹が出た
見上げた空は不吉な赤茶色
通りがかりの雑木林からは
耳が傷むほどの蝉の声がする
そうして僕はやっと今が夏だと思い知ったけれど
帰ってきた部屋に響くものなんか無くて
蝉の声も今は遠く 夢の中の耳鳴りのよう
夏という季節の存在を疑おうと思った朝
夕べはあんなに白く無垢だった君の裸体も
朝日に晒されれば面影さえなく
すっかり手垢に塗れている
無邪気な過去を食い散らかし 丸みを帯びるカラダ
何時から君はオンナになった?
君の同一性が不明だ
夏の実在が不在だ
時は身を投げ続ける
楽園は永遠の過去形
皮膚のあちこち 徒花を咲かせ
恍惚と液状化していた君が
今はもうそ知らぬ顔で外へ行こうとしている
生けたばかりのはずの花も萎れ
悪臭を放ち始めた
価値あるものはすべて過去に飛び去り
尊いものほど握り締めた瞬間 意味と価値を失う
ここには不確かな余韻しか残らない
明け方の虹もとうに消えて
弔いのように空がまっすぐ青い
君が置いていったスカーフを燃やしてやろう