さよなら夏の光
思い起こすは陰翳礼賛
ずっと隠れていたのわたし
夏の陰に隠れて
誰にもみつからないように
夏の陰でしゃがんでた

さよなら西瓜の青み
思い起こすは終戦記念日
ずっと黙っていたのわたし
夏の陰に隠れて
誰にも捕まらないように
夏の陰で黙ってた

さよなら薄い兵児帯
思い起こすは盂蘭盆の灯
そっと振ったら光のすじが
線香花火みたいに
ちりちり
ぽつん
火の玉が落ちて
わたしひとり
ぽつん
夏の夜は寝苦しかった
さよなら夏の光
思い起こすは陰翳礼賛
光だと思っていた季節が教えてくれた
眩しかったものたちを描き出していたのは
すべて
陰でした