不規則なリズムは不快感しか生まない
いや、きっとオレの身体の中に押し込められている中核が
左にずれてしまったときから
それは顕著に不協和音を奏でていたのだろう

なぜ気づかなかったのか

気づきたくなかったからだ

それに尽きる

肺と肺の真ん中ではなく少し左
というのもミソかもしれない
肺すらも変形させて存在する中核は
オレの不安を苛立ちを助長させる

ドクンとかいう簡単な単語で表現できたら
不協和音なんて言葉は使わない
そいつはいつだって不規則に規則性をつけて動いている
オレの意志などお構いなしに

秋のもの悲しい夕暮れに
左胸がぎゅと縮む
静かで遠い空を見上げれば
風が髪を煽って涙を誘う
左胸は変な方向へと傾い(カシイ)でいく

振り向くな
振り向くな

過去にとって喰われる

息が、苦しい

肺に酸素が行き渡っていないのか
左胸の鼓動は静かに病んでいる
表現できない音を奏でながら
それでも生きることを強いる

残酷な生存本能

断罪の日は突然訪れる
いや、正確には救済の日だ

ある晴れた冬の日
霜が降りた公園を歩く
朝陽が眩しくて目を細める

空を見上げた瞬間
涙腺は決壊した

左胸の不協和音は
不協和音ではなくて
はじめからのオレの音

生きてきたオレの音
生きているオレの音
生きていくオレの音

ぐしゃぐしゃに泣き散らして
不協和音をもっと不協和音にしてやったら
呼吸が少し楽になった

オレのリズム
オレのメロディ

左胸に秘められていた

気づきたくなかった

真実

オレは不協和音のまま生きていていい

唐突に悟らされる朝に驚愕し
感謝した

この不協和音こそが生の証